pigeon1914の脱原発ブログ
脱原発に役立つ情報をつらつらと書いてゆきます

1/20、電力は震災後最大の需要を記録したが、もちろん停電はしなかった

 しばらく更新をサボっていたのでスポンサー広告が表示されるようになってた。

 ツイッターでも書いたのだけど、先日1月20日に、東電エリアで震災後最大の電力需要を記録したそうだ。

 東京新聞: 電力需要が震災後最大 東電管内、厳しい寒さで
 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012012001002522.html

 ふつう、電力需要の年間最大値は真夏の暑い日に記録するのだが、昨年の夏は節電令が功を奏したのか、今ごろになって2011年度の最大電力を記録したということだろう。

 もっとも、クーラーの普及いらい、北海道電力をのぞく電力各社で真夏にピークが来るようになったとはいえ、むかしの記録を見るともともとは電力需要のピークは真冬にあったようで、最近だって真冬の電力需要は真夏とたいして変わらない規模で増加する。

 だから、1/20の最大需要は、ことし夏の電力ピークを予測する上でおおいに参考になる。

 さて、上の東京新聞の記事によると、ピーク時の需要は4980万kW。これに対して20日のピーク時供給力は5380万kWだったという。その差、ちょうど400万kW。

 つまり、震災後最大の電力需要にもかかわらず400万kW、10%弱も余裕があったというわけ。

 ちなみにこのとき東電の手持ちの原発は柏崎刈羽原発5、6号機の合計245.6万kWのみだ。

 したがって、仮にこのとき東電の全原発が止まっていたと仮定しても、400-245.6=154.4万kWと、原発一機ぶんていどの余裕があったということになる。これは決定的な数字だろう。

 東電が持つ原発のうち、福島第一はもちろん再稼働などできないし、福島第二についても福島県知事が運転を認めないと明言しているいじょう、現実的には廃炉だろう(それに忘れてはいけない、福島第二だって4号機が圧力抑制機能喪失して原子力緊急事態宣言、あわやドライベントというところまで行ったのだ)。

 つまり泣いても笑っても東電がもっている原発は柏崎刈羽原発1~7号機だけということになる。
 この合計設備容量は821.2万kW。それが東電の発電設備ぜんたいの何%にあたるのか?

 これは簡単に計算できる。1/20の最大供給力が柏崎刈羽原発5,6号機をふくめて5380万kWなのだから、仮に柏崎刈羽の全号機が稼働したばあいの容量は5955.6万kW、したがって、柏崎刈羽原発の発電容量は全体の14%に満たない。

 いぜんこのブログで計算したように、震災前のデータに従えば、東電エリア単独では原発なしだとピーク時電力供給能力は不足するという試算になった。でも、あれから10ヶ月。東電は火力の増強を行ない、結果、ギリギリであれ火力+水力だけで不足しないところまで準備を整えたということだ。今回の件でそのことが明らかになったと思う。

東京新聞Web
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わずか20Bqでも検出 - 食品の放射能汚染は個人で検出できるか? [4]

 前々回の記事から食品の放射能測定について検討を続けている。

 いま食品の汚染で問題になっているのは半減期の長い放射性セシウムによるものだ。
 おもな放射性セシウムとしてCs137とCs134があげられる。
 このふたつはどちらも崩壊の際にγ線を放出するのでNaI(Tl)シンチレーション検出器で測定可能だ。しかし、何ベクレルの時にどのていど針がふれるのかを知っていないと計測とはいえない。この目的のためには放射能濃度の分かっているセシウムの標準線源があればいいのだが、それは簡単には手に入らないので、カリウムで代用することにした。炭酸カリウムを使った模擬線源の製作については前々回の記事を参照してほしい。

■精度をもとめて

 前々回の実験では、液体の液面に検出器を差し入れて測る方法でサンプル1リットルを測定したところ、カリウムの模擬線源にして200Bq/L程度が限界だった。

 そこで、測れるサンプルの量はむしろ少なくなるが、鉛で遮蔽してバックグラウンド放射線を減らした環境ではどうかを調べてみた。

 結果を動画で紹介する。



 最初に空の鉛チェンバーにデテクター(検出器)を差し込んでバックグラウンド放射線を測定した。前回の鉛インゴット単独の時よりもわずかに高く3~4cpsあった。鉛チェンバーのサイズの関係で100mlのポリ容器を4つ入れるのが精一杯なので、サンプルは400ml程度しか入れられないが、500Bq/Lや200Bq/Lのサンプルは特に問題なく測れた。

 この場合、「測れた」というのは、正確なベクレル数が測定できたという意味ではなく、バックグラウンドに較べて明らかに放射線量の上昇が読み取れたという意味だ。期待どうり、バックグラウンド(BG)を3~4cps程度に抑えてメーター全体のレンジを切り替えて0~5cpsで測定できたので、500Bq/Lや200Bq/Lについてはメーターが振りきれる(>5cps)という形ではっきりと放射能を検出できた。

 いっぽう、今回は50Bq/Lと20Bq/Lというかなり放射能の低いサンプルも作って測ってみたが、このくらいになるとたとえレンジ切り替えをしても振りきれないし、針の振れ方もBGと較べて明らかに高い・・・というわけにはいかなかった。

 そこで、長時間測定を行なって統計的な分析をしてみることにした。

 計数をデジタル式で表示する器械ならある一定時間の積算計数を簡単に表示できるのだと思うが、筆者のサーベイメーターはアナログメーターしかついていないので、ピピピピという「音」を録音して数えることにした。もちろん一個の「ピッ」が一個のγ線の検出に対応している。

■統計的な分析へ

 バックグラウンド放射線と、計測したい放射線との差がわずかしかない場合に、メーター直読ではダメになるということには統計的な根拠がある。放射線に関する教科書ならどの本にも書いてあることだが(たとえば文科省の「放射線測定法シリーズ」3「放射性セシウム分析法」というPDFの5ページに説明がある)、

 いまバックグラウンドの計数をNb、バックグラウンドの計測時間をtb、サンプルの計数をNs、サンプルの測定時間をtsとすると、正味の計数率とその標準偏差は次の式になる。

統計計算
 正味の計数率(Ns/ts-Nb/tb)は計測時間がある程度長ければほぼ一定になるが、標準偏差は計測時間が長くなればなるほど小さくなることがわかる。

 上の式で「±」のあとに書かれている部分が標準偏差σだが、統計学によれば真の値が±σの範囲に入っている確率は68.3%、±2σの範囲に入っている確率は95.5%、±3σの範囲に入っている確率は99.7%となる。

 だから±2σの範囲がほぼ95%信頼区間に等しいわけで普通の統計処理ではこれで十分だけど、上述の「放射性セシウム分析法」では±3σ以上を有意差ありとしているので、以下それに従うことにしよう。

 すると、ようするに「正味の計数率-3σ」が0より大きくないとバックグラウンドにくらべて有意に大きいと言えないわけだ。

 ところが50Bq/Lとか20Bq/Lのときは、正味の計数率はかなり低くなるので、装置がたとえデジタル式であっても、ある程度長時間計測しないと3σを超えないのだ。これは器械の精度が足りないのではなく、原理的にそうなるのが当たり前なので仕方がない。

 さて、以上を頭に入れて実際の計測を長時間行なえばいいことは分かった。
 下の図のように録音データも揃った。具体的には、BGも含めて各サンプルにつき20分程度測定して計数と測定時間を記録した。

Audacity01.png

 さてこの音の記録からカウント数を出せばいいのだけど、耳で数えるのは無理だし、データを表示しながら目で数えるのも現実的とはいえない。ごく短い時間のデータならそれでいいけれど、数十分とか数時間となると無理だ。ピッピッという音を機械的に数える方法…というのは直感的には簡単なことだけど、具体的にどうソフトウェアで処理するか? となるとなかなか難しい。

 たとえばCDVcounterという、まさにガイガーカウンターの音を数える専用ソフトがあるが、これはうまくいかなかった。CDV-700というガイガーカウンターにはオーデイオ出力専用の端子があって、このソフトはここからの音を数えることに特化しているからだろう。読み落としや数えすぎが多くて残念ながら使い物にならなかった。ほかにも Giger RoboCircadian Rhythm Recorderといったソフトを試したがいずれもうまくいかない。

 けっきょく、上の図のAudacityという音声エディタに標準でついてくるプラグインを一部書き換えることで無事カウント数を得ることができた(本文の末尾*1参照)。
Audacityによる計数

 この方法によって下の表のようなデータが得られた。

表01

 表の中の20Bq/Lと50Bq/Lの部分は、正味の計数率(緑の下線部分)よりも3σ(赤の下線)の方が大きくなってしまっている。しがってこれをグラフ化しても、これらの部分はエラーバー(±3σ)が0よりも下まで伸びてしまい、有意差ありと言えなかった。

グラフ01
[エラーバーは±3σ]

 でも、精度を上げる方法はすでに分かっている。BGとサンプルの計測時間を長くすればいい。そこで今度はBGと20Bq/Lのサンプルだけ長時間(3時間)再測定して、以下のような結果を得た。

表02

グラフ02
[エラーバーは±3σ]

 20B/Lでも有意差をもってBGより大きくなった。つまりここで行なったように3時間もかければ20Bq/Lという微かな放射能でも十分に検出することができることが確認できた。時間がなかったので50Bq/Lについては再測定を行なわなかったが、BGの標準偏差が小さくなったのでそれだけで有意差ありとなった。



■次回について


 ここまでで、鉛チェンバー内で長時間計測すれば20Bq/Lというわずかな放射能汚染でも有意に検出することができることがわかった。

 次回は、ここまでで得たデータを使って、もう少し短時間で測定する方法や、「有意差」の意味についてもう少し細かく検討を加える予定だ。

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 以下の節ではこれまでの記事で触れていなかった細かい点について少し補足しておく。

 でも、細かい議論になるので以下は興味がある人や疑問を感じている人にだけ目を通して頂ければ良いと思う。

■セシウムのγ線放出割合について

 カリウムが崩壊する時にγ線を放出する割合は10.7%だけだということはすでにふれたが、ではセシウムではどうか、という点はまだ検討していなかった。

k40の崩壊統計s
[『アイソトープ手帳11版』 社団法人アイソトープ協会・丸善より引用]

 下の図に示すように、セシウム137のばあい、全崩壊のうち5.6%は1.18MeVのβ線を出してバリウム137に変化する。この時はエネルギーはすべてβ線によって運び去られるのでγ線は出ない。

Cs137の崩壊ダイヤグラム
[『アイソトープ手帳11版』 社団法人アイソトープ協会・丸善より引用]

 いっぽう残り94.4%は0.51MeVのβ線を出してバリウム137mに変化し、このバリウム137mが半減期2.5分で崩壊する時に0.66MeVのγ線を一本出す。ただしこの場合のγ線放出割合も100%ではなく89.7%だ(残り10.3%は内部転換電子となる)。

Cs137の崩壊統計s
[『アイソトープ手帳11版』 社団法人アイソトープ協会・丸善より引用]

 ということは、Ba137mがγ線を出すところまでをセシウム137の崩壊としてカウントするなら、γ線の放出割合は94.4%×89.7%=84.7%にすぎないことになる。だから、汚染がセシウム137だけによるものならセシウムで観察されるはずのγ線のカウントを15%ほど割り引かなくてはならない。ところが、今回の福島第一原子力発電所事故では、Cs137とCs134がほぼ同じくらい出ている。半減期が約2年のCs134は137よりも早く減っていくが、当面この割合が続くとすればCs134の場合も考慮が必要になる。
 Cs134の崩壊は、『アイソトープ手帳』によると下の表のようになる。

Cs134の崩壊統計s
[『アイソトープ手帳11版』 社団法人アイソトープ協会・丸善より引用]

 この表の読み方にちょっと自信がないのだが、「おもな光子のエネルギー(MeV)と放出割合」という欄に0.605- 97.4%, 0.796- 85.5%などのように書いてあり、その合計が軽く200%を超えてしまうのは、平均2本を超えるγ線が放出される・・と考えるべきではないだろうか? だとすると、Cs134とCs137がほぼ同量含まれているセシウム汚染食品では、平均一崩壊あたり1本以上のγ線が観察されることになる。ゆえに、γ線の放出割合を100%と控えめに見積もっても問題ないだろう。

■食品に含まれるカリウムの影響をどう考えるか

 ここまで行なってきた実験は、カリウムを使って放射性セシウムに汚染された食品を「シミュレーション」するためのものだ。ところで食品には本来ある程度のカリウムが含まれているものがある。カリウムは人体に必要な元素なのだから当然だ。

 では正常な食品中に含まれているカリウムの影響を受けるのではないだろうか?
 影響はあるだろう。NaIシンチレーションサーベイメーターではカリウムのγ線とセシウムのγ線を区別できないのだから当然だ。問題はどの程度の影響があるか、だろう。

 プロでも大雑把なスクリーニング(振り分け検査)にはNaIシンチレーション検出器を使用する。すべての試料をGe検出器で測ることはできないからだ。でも精密測定にはGe検出器を使う。Ge検出器がなぜ高精度なのかというと、単純に感度がいいからだけではなく、γ線のエネルギーを測って核種分析ができるからだ。つまりGe検出器にとってはカリウムとセシウムは全然違う信号として区別できるし、同じ放射性セシウムでもCs137とCs134では放出するγ線のエネルギーが違うため別の核種として区別される。

 したがって、Ge検出器が使えればそれがいちばんいいのだが、高価なGe検出器は政府機関や地方自治体、大学などにしかない。それらの測定が万全に行なわれているならそもそも市民による測定は必要ないだろう。ところが政府などの測定は数も万全ではない上、ばあいによっては意図的に隠されることがある、ということを今回の原発事故で多くの人が感じている。だからこそ自衛のために市民による放射能測定が行なわれるのだ。

 しかし、だからといってカリウムと放射性セシウムの区別がつかないとしたら困る。食品の中のカリウムの影響がどの程度なのか検討してみよう。

 下のサイトにはカリウムを多く含む食品についてまとめられている。

カリウムの多い食品と、食品のカリウムの含有量一覧表
http://eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/kalium.html

 カリウムの多い食品として有名なバナナは100gあたり360mg程度のカリウムを含む。でももっと多い食品もたくさんあるようだ。たとえば乾燥こんぶは5300mg。乾燥した食品にカリウムが多いのは、水分が蒸発してもカリウムは残るので濃縮されるのだろう。興味深いのは肉類で、二つ目の表によれば牛肉でも部位によってある程度ばらつきがあるのは何故なんだろう?

牛ひれ肉(輸入)  370mg
牛肩ロース(輸入) 300mg
牛ばら肉(輸入)   230mg

 だいたい同じようなオーダーとはいえ、2割程度の誤差は無視するには微妙すぎる。実際には汚染していないサンプルを使って比較するべきだろう。

 でもいちおう、だいたいどの程度の桁になるのか見当をつけておくために、100gあたり300mg程度のカリウムを含む食品で考えてみよう。100gあたり300mgなら、1Kgあたりでいうと3gのカリウムが含まれていることになる。放射能を測る上では重量あたりの量よりも体積あたりの量が重要だが、食品の密度はひじょうに大雑把にいうと水と同じくらいでだいたい1g/cm3と考えると、3g/Lと考えても大きな違いはないだろう。何度も書いているように1gのカリウムには、30.4Bqの放射性カリウムが含まれているから、3g/Lならその3倍の91.2Bq/Lとなる。だだし、カリウムがγ線を出すのはそのうち10.7%だけなので、今回の測定法に関する限りは91.2Bq/Lx0.107=9.76Bq/Lとなる。セシウム換算ではおおよそ10Bq/Lと考えていいわけだ

 今回の実験では20Bq/L程度でも長時間測定で検出できることが分かったのだから、10Bq/Lというのはこれより少ないとはいえ影響のある数字だ。だからたとえば牛肉を測定して20Bq/L程度の放射能が検出されたら、そのうち10Bq/Lほどは自然のカリウムの影響を差し引かなくてはならない。むろん、少し前に報道された2,300Bq/Kgものセシウム汚染牛肉ならカリウムとの区別が問題になることはないだろう。

 もっと大幅にたくさんカリウムを含む食品、特に乾燥した状態で測るものについては注意が必要だろう。たとえば前掲のサイトによると抹茶(粉)には100gあたり2700mgのカリウムが含まれるから、γ線だけ測れば87.8Bq/Lほどになるはずだ。普通の緑茶の乾燥茶葉の状態のデータはこのサイトにはないが、肉やバナナに比べると高めにでそうだ。

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*1 Audacity のプラグイン「Sound Finder」を書き換える方法
「Plug-in」フォルダの中にある「SoundFinder.ny」というファイルの15行目を以下のように書き換える

;control sil-dur "Minimum duration of silence between sounds [seconds]" real "" 1.0 0.1 5.0



;control sil-dur "Minimum duration of silence between sounds [seconds]" real "" 1.0 0.0001 5.0

これで0.001秒以上持続する無音区間を残らず数え上げてナンバーを振ることができる。

食品の放射能汚染は個人で検出できるか? [3]

■鉛で遮蔽してバックグラウンド放射線を低減

 前回は放射性セシウムで汚染された食品を検出するために、汚染食品と同程度の放射能をもつカリウムの線源を作成した。その結果、飲料の基準値である200Bq/L程度以上の放射能をもつ試料なら、メーター直読によって検出できた。しかし、放射能の濃度がさらに低くなるとメーターの振れ方がかすかになってしまうため、検出がかなり微妙になってしまうことが分かった。
 これは、測りたい放射能以外に、自然の背景放射線が意外に強いせいだ。バックグラウンド放射線も確率的な現象なので、針はふらふらとゆれ動く。だから、より低濃度の放射能を精密に検出するためには、バックグラウンド放射線を低減する必要がある。

 ここで少しおさらいをしておこう。α線は紙一枚で、β線はアルミの板一枚で完全に遮蔽できるが、γ線は透過力が強いため、遮蔽には鉛のような原子番号の大きな物質を使う。

 しかも鉛でも完全にさえぎることができるわけではなく、ある程度は透過してしまう。あるエネルギーを持つγ線を半分に低減できるような物質の厚さを「半価層」、1/10にする厚さを「1/10価層」という。たとえば0.5MeV(メガエレクトロンボルト)のγ線を半分に遮蔽する鉛の厚さは0.5cm、1/10にする厚さは1.6cmとなる。

lead01.png
[『放射線概論』通商産業研究社 p.433より引用]


 半価層の鉛を置けばγ線は半分になり、同じ厚さの鉛をもう一枚重ねれば、さらに半分の1/4になる。だからどれほど厚い鉛を置いてもγ線は完全にゼロにはならないわけだ。しかも、γ線のエネルギーが高くなると半価層も厚くなる。たとえばカリウム40のγ線は1.46MeVもあるので、上の表に従えば半価層は1.7cm近く必要になることが分かる。宇宙線の中には数GeVを超えるものもある。

BG01.png
[『放射線概論』通商産業研究社 p.346より引用]


 書物を読んでみると、ゲルマニウム検出器で放射能を測定する際には、厚さ10cmの鉛で遮蔽するという。

 ここでちょっとクイズを。

 一辺が10cmの立方体型の空間を厚さ10cmの鉛の容器で囲むとすると、この鉛の容器の重さはどのくらいになるか分かるだろうか? つまり、一辺の長さが30cmの鉛のかたまりの内部に一辺が10cmの空間だけくり抜いたものを考える。鉛の密度は11.34g/cm3。答えは約300キロ(!)となる。費用もかなりかかるが、それ以上に重くなりすぎて一般家庭では床が抜けてしまうだろう。もちろん持ち運ぶことなど論外だ。だからもっとずっと控えめなところでがまんする必要があるだろう。

 ひとまず鉛のインゴット(延べ板)を購入して実験してみた。
 用意したのはTGメタル製の純鉛の延べ板(FG-02)で、これは一本2.5Kgある。厚さは1.6cmほどだ。

鉛インゴット01

 結果を動画で紹介しよう。



 鉛インゴットを下に敷くだけで線量は30cpsから20cps程度に低下する。
 さらに側面を遮蔽すると半分程度になる。
 自然放射線の半分は大地の岩石等から来るということがうなずける結果だ。さらに上からの宇宙線も遮蔽すると、最終的には2~3cpsまで低減できた。

 5cps以下ならばメーターのレンジをより鋭敏な方に切り替えることができる。
 つまり今までメーターの針は0~50cpsだったのが、0~5cpsと、10倍鋭敏に表示できるのだ。
 これまでは1目盛り(2cps)の変化を読み取るのはかなり微妙だったわけだが、これを10倍に拡大して表示できれば、それだけ自信を持って読み取れることになる。
 ただし、実際の針の振れを見て分かるように、検出がまばらになると、それだけメーターの針もふらふらと揺れ動くようになるため、単純に10倍細かく読み取れる・・とはいかないようだ。

 それと、毎秒30回もの検出が、鉛で遮蔽すると3cps程度になるということは、30cpsの検出の大部分は器械の内部ノイズではなく、本当にγ線を検出していたということになる。

 目の前の小さな空間にそれほどたくさんのγ線が飛び交っているというのはちょっとショッキングなことだ。

 上の予備的な実験では、円筒形のデテクター(検出装置)を鉛の小室の奥深くに差し入れて計測した訳だけれど、そうするとかんじんの測定サンプルを置く場所が取れない。つまり、測りたいサンプルを置く場所自体も遮蔽しなくてはならないし、デテクターも遮蔽しなくてはならないので、実際に放射能計測用の小部屋を作る際にはもう少し鉛が必要になるだろう。


■測定用の小部屋(チェンバー)を作る

 上の予備的な実験を受けて、サンプルを置くスペースの大きさとして、一辺10cmの立方体の空間(つまり容積は1L)を確保し、デテクターを収納する空間はプラスチック製の円筒のまわりに鉛テープを厚さ1.6cm以上巻きつけることにした。

 測定用鉛チェンバーを製作中と完成した状態の写真を示す。

鉛チェンバー01

鉛チェンバー02

鉛チェンバー03

 内側と外側はアクリル製の透明な容器で、その間に鉛インゴットと鉛粒が詰めてある。写真に示したように、100mlのポリ容器を一度に4つ入れて計測することができる。写真では見えないが、実は外側のアクリル容器の底面の下にも一層、鉛インゴットを敷き詰めてある。先の予備的な実験では背景放射線を1~2cps程度まで低減できていたが、こちらの完成品では、デテクターの位置が浅いのか、3~4cpsより低減するのは難しかった。

 なお、見た目にはわかりにくいと思うが、この測定用チェンバーの総重量は30Kg弱あり、簡単には他の場所に移動させることができなくなってしまった。

 いよいよ次回は、今回製作した鉛チェンバーに、前回製作したカリウム模擬線源(放射性セシウムに汚染された食品を模したもの)を入れて、どの程度まで検出できるか実験する。

食品の放射能汚染は個人で検出できるか? [2]

■模擬線源はなぜ必要か?

 前の記事を書いてから思ったより間があいてしまった。
 放射能計測の実験がようやく一段落したので報告する。

 NaI(Tl)シンチレーション検出器を入手したところまでは前回報告した。
 筆者がこれを入手したのは食品の放射能を測りたいからだ。文科省が出している『緊急時における放射性ヨウ素測定法』というPDFには、このシンチレーション検出器を使って放射性ヨウ素を検出する方法が書かれている。ただこの文書では「スクリーニングにより選択された試料は、分析所に持込んで測定容器に移し、Ge半導体検出器を用いてより精度の高い測定を行う」となっている。たしかに、いかに政府機関が信用ならないとはいえ、あからさまに汚染された食品が見つかったら結局は精密測定を依頼することになるだろう。

 とはいえ、このシンチレーション検出器でぎりぎり検出できるのは何ベクレルくらいなのかが分からない。メーターが微妙な振れかたをしている時、本当に放射能を検出しているのだとしたら何ベクレル程度なのか、逆に何ベクレル以下ならこの検出器で見逃してしまうのか、ということを知らないと疑心暗鬼になるばかりだろう。ご存知の通り、政府は食品に関する暫定基準を発表したけれど、それはかなり甘いという批判の多い基準だ。たとえばセシウムで500Bq/Kgなら検出できるけど200Bq/Lではダメだということだと不安が残る。

食品の基準
[『小出裕章が答える原発と放射能』河出書房新社p.95より一部を引用]

 実際に500Bq/Kgのセシウムに汚染した食物や200Bq/Lに汚染した飲料のサンプルがあれば話は簡単だ。それを測ってみた時のメーターの振れ方をみればいい。でもそんなものは身の回りにはない。筆者は関西在住のためか身の回りに実際に汚染した食物が出回っているという話も聞かない。福島や関東在住でこれを読んでいる読者にしても、仮に汚染した食物が目の前にあったとして、それが何ベクレルか分からなければ、結局よく分からないのは同じだろう。

 そこで、何ベクレルの放射能を持っているかが分かっている「標準線源」または「模擬線源」を作ることにした。とりあえず、誰にでも入手できる方法でなくては意味がない。そこでカリウムを使う方法を考えてみた。

■カリウムを線源として使う
 カリウムには、割合としてはわずかだが放射性のカリウム40という同位体が含まれている。カリウム40が環境中にある理由は極端に半減期が長いためだ(半減期12.8億年)。なので地球ができた頃から少しずつ減って今の量になっている。その存在比率は地球上どこでも同じで0.0117%ほどだ。そのため1gのカリウムは30.4Bqの放射能をもつ。カリウムはありふれた元素なので岩石にも生物にも含まれている。生物の身体の中の方が濃度は高いが、絶対量でいえば岩石に含まれるものの方が圧倒的に多い。大まかに言うと自然放射線のうち半分は宇宙線、半分は大地からであり、その大地の放射線のおよそ1/3がカリウム由来と言われている。

自然放射線のうちわけ
[『放射線概論』通商産業研究社p.400より引用]


 ただし、岩石は膨大にあるからこういう数字になっているので、カリウムを測定用の模擬線源にするなんて無理だろう…と思うかもしれない。たしかに食品や岩石に含まれている程度ならそうだが、精製したものを大量に購入すればどうだろう?

 肥料として売られている硫酸カリウムというものがある。硫酸カリウムは分子量が174.3で、そのうちカリウムが2原子、つまり分子量で言うと39.1x2=78.2だけ含まれているので、1,000gの硫酸カリウムには1,000×78.2/174.3=448.7gのカリウムが含まれている。以上より計算するとけっきょく1Kgの硫酸カリウムは13,640Bqの放射能を持つことになる。意外に強い放射能だ。

 ただしセシウム137のようにβ線とγ線をほぼ同量出す核種の方が多いのだが、カリウム40は少し特殊なので注意が必要だ。89%はβ崩壊でこの時はγ線は出さず、残り10.7%は電子捕獲してγ線を放出する。つまりγ線だけを検出する測定器を用いた場合の見かけの崩壊数は理論値の10.7%しかない。だから13,640Bqのカリウムは、γ線だけ測ると1,460Bqの線源であるかのようにふるまう。

 下の動画は、NaIシンチレーションサーベイメーターでバックグラウンド放射線を測っているところと、硫酸カリウムの袋を検出器のまわりに置いたところ、そして250gほどをコップに入れて検出器の前に置いたところだ。



 注意して見てほしい。この検出器は音を出すことができる。バックグラウンド放射線でもかなりの頻度で検出している。メーターを見るとだいたい30カウント/秒(cps)。ガイガーカウンターだと一秒に一個検出するかどうかという程度なので、NaIシンチレーション検出器がいかに高感度かが分かるだろう。それに対して硫酸カリウムの袋を検出器の周囲に置くと、35~40cpsに上がる。次に、コップに入れたわずか250gでも、かなりはっきりと針が振れるのがわかる。ただし、250gの硫酸カリウムの(γ線で測ったばあいの)放射能は365Bqにすぎないとはいえ、放射能の「濃度」自体はいぜん1,460Bq/Kgであることに注意。硫酸カリウムの密度は2.66 g/cm3あるので、体積あたりでいうと3,884Bq/Lもある。

 実はこの硫酸カリウムを水に溶かして模擬線源を作る実験もやってみたのだが、うまく行かなかったので写真は省略する。うまく行かなかった理由は、(1)硫酸カリウムはあまり水に溶けないので、水に大量入れて薄めようとすると、下に沈殿した状態で扱わなくてはならない。これでは模擬線源として計測が不正確になる。(2)肥料として売られている硫酸カリウムは純度保証が「50%以上」と非常に大雑把なので、放射能濃度の計算に最大2倍の誤差が出てしまう。特に(2)の方の理由が致命的だ。検出器が本当に放射能を測れているかというチェックにはいいけれど、しょせんはそれだけだ。

 上の(1)と(2)のような欠点を持たないカリウムの化合物はないか…と探してみたら、あった。炭酸カリウムだ。炭酸カリウムは食品添加物や水草の栄養剤として用いるそうで、食品添加物グレードの純度99%以上のものが比較的安く手に入る。1Kgで\1800くらいだ(「試薬級」ならもっと純度は高いけれど、高価になるので大量に買えない…。食品添加物級というところもミソだ)。そして都合のいいことに炭酸カリウムは非常によく水に溶けるらしい。なんと、水1Lに対して1Kg以上溶ける。硫酸カリウムでやったのと同じように計算すると炭酸カリウムは1Kgあたり1,840Bqになる(γ線だけを考慮した場合)。だから1,840Bq/Lより薄い線源ならいくらでも調製可能ということだ。

■炭酸カリウム水溶液の模擬線源を測定
 下の動画は実際に500Bq/Kgの炭酸カリウム線源を作って測定したところだ。



 メーターが振れる感度を10倍単位で変えることができるけれど、バックグラウンドが30cpsもあるので、メーター全体を50cpsで使うしかない。感度をこの10倍(全体を5cps)に上げると、振りきってしまって計測ができないからだ。メーターには時定数というものがあって、この器械のばあいFastだと4秒間の平均値を、Slowに合わせると22秒間の平均値を表示する。基本的にはすべてSlowの状態で計測している。それでも放射線の放出は確率的にランダムに起こるので、ある程度針はふらふらと揺れる。アナログメーターを直読する方法では、最大の振れと最小の振れ、そしてだいたいの平均しか読み取ることができないので、あまりに微妙な差を読み取ることはできない。なおこの測定は1.2Lのタッパーに1Lの線源を入れて測定している。結果をグラフにするとこんなふうになる。

遮蔽なし測定01s

 左側は液面に検出器の先を差し入れて測定した場合だ。バックグラウンドがいちばん左の0と書いてあるところで、この上下に伸びているオレンジ色のエラーバーは標準偏差でも信頼区間でもなく、もっと原始的にメーターの最大の振れと最小の振れをむすんだものを表わす。この範囲が重なりあっていてもあきらかに2cps(メーターで1目盛り)ていど上昇すればだいたい見間違えないのだが、そういう言い方ではなんとも感覚的なので、いちおう振れの範囲が重なり合わないことを検出の条件と考えると、50Bq/Lや100Bq/Lでは重なってしまうのでダメで、この結果からは200Bq/Lから上を検出可能と考える。
 右側のグラフは容器の外から計測した場合を参考のために示す。たまたまこの実験の時にはバックグラウンドが低く出たためか、100Bq/Lでも振れの範囲が重なっていないから、一見すると100Bq/Lを検出可能と見えるけれど、それより高濃度のはずの200bq/Lのところで最小の振れがバックグラウンドの最大振れと重なってしまったので(緑色の矢印)結局370Bq/L以上を検出可能とした。

■考察
 上の方の動画ではわずか250gの硫酸カリウムが高い測定値を示したことを思い出してほしい。250gの硫酸カリウムの放射能は365Bqにすぎないにもかかわらず、針はかなり大きく振れていた。しかしこちらの水溶液の実験では、370Bq/Lの線源の測定値はかなり微妙だ。ここでいくつか教訓がある。放射能の測定には「絶対量」と「濃度」が両方効いてくるのだ。濃度が高い場合は絶対量が低くても測定は高くでる。サンプルの大部分が検出器のすぐ前にあるため、検出器の測定部分(ヨウ化ナトリウムの結晶)にたくさんの放射線が入射するからだ。同じ絶対量の放射能でも、1L程度の体積に薄まると放射線の大部分は検出器をはずれてしまうため、検出の効率は低下する。液面に差し入れて測定するのはせめて検出器に入射する放射線の数を稼ぐ方法だ。
 もちろん同じ濃度なら絶対量も大事だろう。この実験では、測定は1Lで行なったけれど、文科省の手順書ではサンプルは飲料でも野菜でも2L用意することになっている。野菜の場合はタッパーやマリネリ容器(検出器を突っ込む窪みのある容器)にぎゅうぎゅう詰めにすることになっている。2Lというのは実際には食品の場合なかなかサンプルを用意するのが難しいのではないかと思ったのと、容器が大げさになる気がしてまだ試していない。…でも容器は百均に行けばいくらでも安く手に入るし、炭酸カリウムもまだ大量に残っているので(筆者は2Kg購入ずみ)、近いうちに追加の実験を行なってみようと思う。

 炭酸カリウムは比較的安く大量に用意できるうえ、汚染食物に見立てた模擬線源を作れる程度には強力な放射能を持っていることが分かった。

 なにより、セシウム137のような特殊で危険な放射性物質を使わなくても、市販のカリウムを使って「500Bqの汚染ではこのくらいの線量になる」という見当が付けられるというのは大きい。模擬線源があるとないのとでは実験できる内容が全然違ってくるのだから非常に大きな成果だった。例のセシウム汚染牛肉は基準値の4倍を超える2,300Bq/Kgだったというが、その放射能濃度なら1Kgといわず500gもあれば検出できるはずだということも分かる。

 ところで、上の方で書いたようにカリウムではβ線の方がγ線よりもたくさん出るので、β線に対して感度を持つガイガーカウンターの方が有利にも見える。でも、放射性セシウムに汚染された食物の模擬サンプルとして使ううえではうまくいかないだろう。NaIシンチレーション検出器はβ線に感度をほとんど持たないため、γ線だけを考えればよく、上で計算したように単純な計算で放射能を決めることができた。しかしガイガー計数器のばあい、β線とγ線の両方に感度を持つことからかえってこの計算がしづらいだろうと思う。γ線とβ線の検出感度がまったく同じなら話は簡単だが、ふつうこの二つは同じにはならないからだ。

■今後の展望
 今回の実験は、じっさいに汚染の疑いのある食品を測定する場面に近い状況で行なった。結果としては200Bq/Lていどの汚染飲料(液体)を検出することは十分に可能と分かったが、それ以下となるとこの方法では難しいことも分かった。サンプルが十分量手に入らない場合や、袋に詰め込む手間をかけないで測定したばあいはもっと条件が悪くなることも推測される。

 これがこの器械の限界なんだろうか? 個人で食品の放射能を測定するのは無理ではないとはいえ、乳児の基準値である100Bq/Lが測定できないのは問題ではないだろうか?

 ここでさらに工夫して検出限界を引き下げる方法を考えてみた。

 ひとつ目は、鉛などでバックグラウンド放射線をできる限り遮蔽して、低い線量での測定を試みる。一般にバックグラウンドノイズが低い方が検出効率が良くなるのはもちろんだけれど、それだけが理由ではない。もっと現実的に、メーターのレンジを切り替えることができれば、同じメーターの針を直読する方法にしても、ずっと見極めがしやすいのではないだろうか? メーター全体を50cpsから5cpsに切り替えて使うことができれば、わずか1目盛りの差を10目盛りぶんの差として読み取ることができるのだから。そのためには、バックグラウンドを5cps以下、できれば4cps以下に下げることが必要になる。そうすれば、仮にサンプルの計測が5cpsを超えて振り切ったとしても、放射能に汚染されたサンプルを見逃さないという目的にはじゅうぶんなわけだ。

 もう一つは、長時間測定を行ない、累積の計数を求める方法だ。
 文科省の「放射線測定法シリーズ」という文書があり、その中の『放射性セシウム分析法』というPDFがある。この文書には、感度の良い低バックグラウンドGM計数装置をもちいた放射性セシウムの測定について書かれていて、長時間(60分程度)の測定を行なうことで1pCi(0.037Bq)ていどまで検出可能と書かれている。長時間測定はこのようにごく正統派なアプローチなのだが、カウント数を積算して数えることはデジタル式の計数装置でないと難しい。筆者のNaIシンチレーション検出器はアナログメーター式だが、なんとかならないか? 一つ考えられるのは、メーターの振れを読み取る以外にピッピッピッという「音」を記録する方法があるということだ。この場合、分析はパソコンでソフトウエア的にすることになるけど、その場合も毎秒30回ものカウントを分析するより、毎秒数回の方がはるかに簡単だろう。バックグラウンド放射線を遮蔽する意味はここにもある。

 もうひとつ、筆者には気がかりなことがあった。NaIシンチレーション検出器の原理は今回は割愛するが、一秒間に30回もの放射線が本当にこの目の前に飛び交っているのか? なぜGM式(いわゆるガイガーカウンター)とこれほど違うのか? 感度が良いのはいいが、器械自身の中で発生しているノイズもかなり含まれていたりはしないか? もしそうしたノイズ成分が多ければ、そのぶんは実在する放射線とは無関係に発生しているわけだから、鉛による遮蔽で変化しないはずだ。逆に言えば、鉛で劇的に線量が下がるなら、毎秒30回もの検出は実際に30個の放射線を間違いなくカウントしていることになる。

 そういう次第で、次回は鉛による遮蔽が、どの程度バックグラウンド放射線を低減できるかを確認してみたい。

参考URL: JK! 重曹&クエン酸販売 http://jk.rodec.net/

食品の放射能汚染は個人で検出できるか? [1]

■シンチレーション検出器とゲルマニウム検出器

 筆者のもとに、以前から注文してあったNaI(Tl)シンチレーション・サーベイメーターが届いた。Ludlum社のModel44-2+Model3 という製品だ。検出器として直径1インチ、厚さ1インチのヨウ化ナトリウムの結晶をもちい、γ線に対して非常に高い感度を持つ。

NaI(Tl) scintillation survey meter 001
NaI(Tl) scintillation survey meter 002
NaI(Tl) scintillation survey meter 003

 文部科学省が出している「緊急時における放射性ヨウ素測定法」というPDF文書にもこれと同じ種類の装置を用いた食品汚染の検出について書かれている。
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No15.pdf

 ただし、厳密な核種同定にはゲルマニウム検出器を用いることになっていて、上のPDFによれば、ゲルマニウム検出器を用いた場合の検出下限が2~6Bq/L程度なのに対して、この装置による簡易測定では100Bq/L程度と書かれている(ヨウ素131の場合)。日本の暫定基準は食品のセシウムで500Bq/Kg以下、飲料で200Bq/L以下(ただし乳児では100Bq/L以下)となっているので、いちおう日本の暫定基準を超えているかどうか程度はこの装置で測れることになるのだが、実際のところどうなのだろう? というのが今回のシリーズのテーマだ。この装置は個人で手軽に買える値段にはほど遠いが、ゲルマニウム検出器の百分の一程度だし、本当に必要なら共同購入などの方法で手が出ない値段ではない。

 すでに、福島では市民の手による食品の測定が始まっていて、そちらではすでにゲルマニウム検出器も用意されているという。
http://news.livedoor.com/article/detail/5707608/
 ちなみにゲルマニウム検出器は一台2~3,000万円もするそうだからとても個人では手が出ないけれど、福島のように需要のある場所でならたくさんの市民による共同購入も可能なのだろう(記事では「高額の測定機器は国内外からの寄附で賄った」とのこと)。ゲルマニウム検出器はプロが使う機械なので専門知識も必要だが、福島では小出裕章氏がアドバイザーになっているのでその点も安心だろう。
http://blog.goo.ne.jp/kodomofukushima/e/26079c75fbbb8c970c9b2f185adf69c9
 なお、この市民放射能測定所でも使われている「ベクレルモニター」というのも、今回取り上げるのと同じNaI(Tl)シンチレーション検出器の一種だ(ただし鉛で遮蔽して感度を上げているのと、計数を積算してデジタル表示するようになっている)。

■測定にかんする現実的なハードル

 この記事は、市民レベルで同じように測定をしようと考える人が参考にできるよう、測定に際してぶつかる現実的なハードルをいくつか取り上げて実験と考察を書いていくことにする。
 今後取り上げる予定にしている項目は以下のとおり。

1) カリウムをもちいた模擬線源の作成と測定の実際
2) 鉛による遮蔽効果の確認と考察
3) 遮蔽によって感度を上げた測定環境の製作
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